映画「パラサイト 半地下の家族」を見て感じたこと
※この記事にはネタバレを含みます。まだ映画を観ていない方は自己責任でお読みください。
初めての韓国映画。久しぶりのシネマコンプレックス
「この作品が今めちゃくちゃ面白い」という評判を聞いた恋人に誘われて、ポン・ジュノ監督「パラサイト 半地下の家族」を観に行った。たしかに「パラサイト」の評判はTVもSNSも大して見ない僕の耳にも入るほどで、界隈的にはよっぽど盛り上がっているんだなということがわかった。
鑑賞後のことだが、なんと2019年アカデミー賞4冠を達成したらしい。*1
「パラサイト」は100%韓国資本で制作を行った作品らしいのだけれど、そんな作品がガチガチにアメリカ資本のアカデミー賞に選ばれるというのは、前代未聞だそうだ。その辺の事情は詳しくないけれど、これだけ騒がれているからにはよっぽどすごいことなのだろう。
それにしても映画館に足を踏み入れるのはずいぶん久しぶりだ。不思議なもので、シネマコンプレックスという場所は訪れるだけでなんとなく気持ちが浮き立つ。キャラメルポップコーンの香ばしい匂いにつられて、ついつい財布のひもが緩んでしまう。上映時間には、ポップコーンが山盛りになったボックスとバケツみたいなドリンクを抱えて座席につく僕の姿があった。
実は、韓国映画を観たのはこれが初めてだ。べつに観ない理由もないけれど、好きこのんで観ようとも思ってこなかった。いわゆる“冬ソナブーム”が巻き起こっていた時代、母親に突き合わされて韓流ドラマを何本か観た程度である。だから、恋愛を軸にしていない映画作品がどんな仕上がりなのか、とても興味がある。
なにが面白いか上手く言えないけど、とにかく面白い
エンドロール後の一番に感じたのは、「今すぐもう一回観直したい」ということだった。画面構成的にもストーリーの展開的にもとてもテンポがよく、さまざまなことがあっという間に進んでいってしまうため、「なんかすごく面白かったけど、なにが面白かったのか説明できない」という気持ちになる。
作品の内容に関する考察は、さんざんその道のプロが語ってくれているのであえてこの場で繰り返す必要はないだろう。*2
ポン・ジュノ監督作品を観たのだって初めてなのだし、「考察」なんて偉そうに語ることもできないし。だからここからは、僕のごくごく個人的な感想を羅列することにする。映画の核心に触れるネタバレも含まれているので、未鑑賞の方はご注意いただきたい。
- 留学してしまったギウの友人が帰国後どうなったのかが気になる。帰国してみたら想い人の家庭は崩壊してるわ、信じて家庭教師を依頼した友人は詐欺容疑で大変なことになってるわで、大変そう。一番かわいそうな人。
- 大広間で酒盛りしてるシーン「絶対ご主人様早めに帰ってくるだろ」と思ってそわそわした。ホラー作品でビビらされるシーンの直前の感じ。
- パク邸からなんとか逃げ出して、大雨の中自宅を目指して駆け下りていくシーンがとても象徴的。雨の流れに従って、「上」から「下」に向かって落ちていく。
- 下層の民は大雨で住処も財産も失ってなんとか命だけは助かったレベルの大災害だったのに、上層の民にとっては「ちょっとたくさん雨降ったね。まあ空気が澄んでよかったわ」程度。対比がエグい。あのシーンから一気にトーンが変わって、貧しさと豊かさの軋轢というか、不穏な感じが顕在化したように思う。
- 半地下=ヒエラルキー最下層から見てもさらに下層、という意味に感じられた。キム一家は「半地下」だけど、その後出てくる「完地下」の男を見るとまだ救いがあるのかな……
- 父親との再会はギウの妄想なのか、未来の本当の出来事なのか。ギウから父親にメッセージを送る方法がないので、やはり妄想なんだろうか。
- 「金を稼ぐ」と決意したからってそう上手く稼げるようになるものでもないとは思う。とはいえ「半地下」なら「完地下」に比べてまだ地上に這い出る希望も残されていて、努力や運しだいで望みを叶えられる可能性もあるのでは?
- 寓話っぽさが強い。教訓めいた押し付けは感じなかったけれど。教訓があるとしたら「想像力の欠如はときに人の命を奪う」ということかもしれない
そんな感想を抱いた映画だった。
上映しているうちにもう一度観に行きたいところだ。
ちなみに「パラサイト」のポスターは、1度鑑賞した後に見ると「あー!」という発見がある。謎解きみたいで楽しいので、ぜひ。
作品データ
「パラサイト~半地下の家族~」(原題 Parasite)
公開:2019年
監督:ポン・ジュノ
主演:ソン・ガンホ
参照:パラサイト 半地下の家族 : 作品情報 - 映画.com